2012年8月9日
私たちの生活の中で最も身近な家具といえば、椅子ではないでしょうか。
最近の椅子は樹脂製のものが多く、
人間工学を採りいれた構造設計がなされたりしています。
あらゆるものにおいて樹脂製品が台頭する中、
木材は21世紀の現在でも椅子の素材として大活躍しています。
ナンナ・ディッツェル(デンマークの女性家具デザイナー)の「トリニダードチェア」。
トリニダードの伝統的なすかし彫り細工からインスピレーションを受けて
デザインされたこの椅子には、アッシュやオークなどの木材が使用されています。
「トリニダードチェア」のように椅子は、複数のパーツを組み合わせて製作するのが一般的です。
中学校の技術・家庭の時間で作ったイスもまさにそんな構造の椅子でした。
アフリカの椅子は、そんな私たちの常識を覆してくれます。
アフリカの椅子の多くは、一木造りです。
つまり、複数のパーツを組み合わせるのではなく、一本の木からくり抜いて作っているのです。
その理由として、「そのほうが椅子として強い」、
「一木造りのほうが製作が容易である」などがありますが、
なによりアフリカの人々は「木を彫る」という行為によって、
椅子に魂が宿ると考えていたそうです。
アフリカ美術の大胆な造形センスは、ピカソやマティスに強い影響を与え、
近現代西洋美術界に革命をもたらしました。
その圧倒的な存在感とプリミティブな力強さは、椅子ひとつを見ても分かりますね。